らんまるのえ
蘭丸の絵

冒頭文

僕等が小学校の時分に、写絵(うつしゑ)といふものが非常に流行しました。それは毒々しい赤や青の絵具で紙に色々な絵が描いてあつて、例へば武人の顔とか軍旗とか、花とか、その中で自分の気に入つた絵を切り取つて、水にぬらして腕や足に貼付け、上から着物で堅く圧えつけるのです。暫くたつて紙をそつとはがすと、その絵がそのまゝ腕に写つてしまふのです。たゞそれだけの事ですがそれをどういふものかその時分の少年達は、此の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「少年 第一九六号(豊年号 十二月号)」時事新報社、1919(大正8)年11月8日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日