ペルリいき
ペルリ行

冒頭文

私は昨今横須賀に住んで、夙に病弱の療養に専念してゐる。それを第一の仕事にしてゐる。小田原からここに移つて、二ヶ月あまり経つた。私にとつての療養の第一は酒を慎しむことである。寧ろ絶対に酒の色香を忘れなければならぬのである。私は従来、あまりに久しく恋愛に迷つたためしはないが、それでも昔学生服を着てゐた時分に、忘れ給へ、忘れ給へ、否応なく忘れるより他はどうするといふ術のありやう筈はないんだもの——といふ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 牧野信一全集第六巻
  • 筑摩書房
  • 2003(平成15)年5月10日