あさはらろくろうしょう
浅原六郎抄

冒頭文

先日銀座で保高さんに遇ひ、文芸首都に何か書くようにと命ぜられた折、わたしは浅原六朗を——と応へた。それより他に誰も思ひ浮ばなかつたのである。畢竟、彼はわたし達の文学生活にとつて忘れることの適はぬ旧友であり、やがてこれからは人生上の歴然たる友達としての行手が待つてゐるのだと、わたしは漸くこの頃になつてはつきりとして来た次第である。何しろわたし達は喧嘩ばかりして、漸くこゝまで達したものとは申せ、わたし

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝首都 第三巻第七号(七月号)」黎明社、1935(昭和10)年7月1日

底本

  • 牧野信一全集第六巻
  • 筑摩書房
  • 2003(平成15)年5月10日