そうしんき
痩身記

冒頭文

一 この間うち、東京へ行つてゐた時、不図途上で、坪田譲治氏に出遇つた。坪田氏とは、会合などの時に二三度お目にかゝつたくらゐで、大森にゐたころ訪問を享けたこともあつたが、わたしがあちこちを転々としてゐるために、機会を得たいと思ひながら、その折を見出せなかつた。といふのは、わたしは坪田氏の作品は可成り久しい前から、主にその短篇を折に触れては愛読し、余程の親しみを感じてゐたので、大森でお目にか

文字遣い

新字旧仮名

初出

「都新聞 第一七〇二四号~第一七〇二六号」都新聞社、1935(昭和10)年4月7日~9日

底本

  • 牧野信一全集第六巻
  • 筑摩書房
  • 2003(平成15)年5月10日