サフランのはな
サフランの花

冒頭文

これは私の父親(二十五才)の日記である。一八九八年六月、在米ボストン市          * 六月六日(月) 晴、午後に至りて風強し。頭あがらず。七時八時九時と時計を見入つて登校の思ひに急がれるばかりだがいよ〳〵もうブラッデイ氏の講義に間に合はぬとあきらめたら再び熟睡に落ちて十二時に醒めた。信一の夢を見ること切りなり。余は二度と故山の土を踏まざる考へを胸底深く秘め居れども子を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「行動 第二巻第七号(七月号)」紀伊国屋出版部、1934(昭和9)年7月1日

底本

  • 牧野信一全集第五巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年7月20日