「みたぶんがく」といわやふじん
「三田文学」と巌谷夫人

冒頭文

これに出てゐる「十二時」といふ小説は、姉のだよと十郎が僕の机の上にあつた「三田文学」を指さしたので、僕はおどろいてそれをとりあげ、早速その場でその小説を読みはぢめたときのことを僕は今でもはつきりと思ひ出せるのだ。僕らが二十歳になつた頃であるから凡そもう二十年に達しようとするむかしのことだが。「十二時」といふ好短篇は、お午の十二時の食卓を囲んで健やかな大勢のきようだいが談笑にふけつてゐるさまを至極さ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「三田文學 第八巻第六号(六月号)」三田文學会、1933(昭和8)年6月1日

底本

  • 牧野信一全集第五巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年7月20日