ごがつむいか
五月六日

冒頭文

一ぺん朝はやく起きたのであつたが、ゆうべから読みかけてゐた「ライネケの話」といふおとぎばなしを感心しながら読んでゐるうちに、うと〳〵してしまつて風谷龍吉君に起されると、お午だつた。風谷君はこのあひだうち水戸へ行つてゐた時から知り合ひとなつた高等学校の生徒である。古いアメリカ版のお伽ばなし集で、作者の名前が誌してないのだが、どうもこれはゲーテ作のやうな気がするので、龍吉君に質問したが知らぬといふ。挿

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝首都 第一巻第六号(六月号)」文學クオタリイ社、1933(昭和8)年6月1日

底本

  • 牧野信一全集第五巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年7月20日