てがみ
手紙

冒頭文

お手紙拝見。面白い手紙だつたよ。あれだけ能弁な手紙が書けながら、まつたく君の熒々たる気焔には寧ろ小生は怖れを覚ゆるのであるが、それで、何うして、「哲人の石」の続稿がつゞけられないのか、不思議と思ふ。昨夜も小生は、あの君の作品を、三人の友達に向つて、声をあげて披露したところが、大かつさい——そして皆々感嘆絶賞の唸りをあげて、ひたすらその続稿の到来を待つばかりであると云ふではないか。そこで小生は叫んだ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「セルパン 通巻第十四号(四月号)」第一書房、1932(昭和7)年4月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日