しょうわごねんにはっぴょうせるそうさく・ひょうろんについて 「つるべとげっこうと」そのた
昭和五年に発表せる創作・評論に就て 「吊籠と月光と」その他

冒頭文

「僕は哲学と芸術の分岐点に衝突して自由を欠いた頭を持てあました。息苦しく、悩ましく、砂漠に道を失ふたまま、ただぼんやりと空を眺めてゐるより他に始末のない姿を保ちつゞけた。」 これは今年のはじめに発表された「吊籠と月光と」の冒頭の言葉で、そして私はこの作と「ラガド大学参観記」といふ作品とで、さうした砂漠の世界から駈け出して、不思議な原始生活の中に翼を拡げて、ある生活を見出すまでのことを書いたの

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十七巻第十二号(十二月号)」新潮社、1930(昭和5)年12月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日