ぶとうがっこうけんぶつ
舞踏学校見物

冒頭文

とても蒸暑い日でした。私たちは、暑い暑い、今日は殊更に暑いではないか、僕はさつきまで自分の部屋に居たのであるが、凝つとしても汗が流れたよ、身の扱ひように困つて転々(ごろ〳〵)してゐた仕未だ。昨日と今日は室内でも九十度を超へたのだからね——などゝ話合ひ、自働車に乗り、京王電車に乗り、そして河添ひの道を歩き、汗を拭ひ素晴しい暑さだ! と繰り反しながら、遥々と多摩川のほとりまで出かけて、爽快な舞踏学校の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人サロン 第二巻第九号(一周年紀念九月特輯号)」文藝春秋社、1930(昭和5)年9月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日