しょかつうしん
初夏通信

冒頭文

一 (封書——。宛名、神奈川県足柄上郡R——村字鬼塚タバン・アウエルバツハ気付、御常連殿) 僕は東京の生活が物珍らしく、愉快で愉快でマメイドのことなんて思ひ出す余裕もなかつたよ。それで、君達が何んなに憤慨し、何んなに烈しく亢奮して夜毎に僕を罵倒してゐるであらうか! といふことは、時々僕のデイライト・スクリーンに、まざまざと写り出るのであるが、そんな光景もさつぱり怖ろしくないのだ。ミス・マメ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「近代生活 第二巻第七号(七月号)」近代生活社、1930(昭和5)年7月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日