とじょうにっき
途上日記

冒頭文

上 都合に出て来ると都合の空気を腹一杯に満喫したいのが念願である。物資に依つて購ひ得られる享楽はこよなく楽しい。殊に田園生活者の僕には止め度もなく嬉しい。だが僕の物資は忽ち無に直面する。だが僕は、その無にさつぱり動じない自分を発見した。山間でのストア派的生活のおかげであらう。山間といへば、ついこの頃、その村で山の神様の祭り日に当つて、今年は一つ新時代的の祭りを行ひたいが、貴意に謀りたい——と

文字遣い

新字旧仮名

初出

「読売新聞 第一九一一四号、第一九一一六号、第一九一一九号」読売新聞社、1930(昭和5)年5月13日、15日、18日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日