だんそうてきに
断想的に

冒頭文

葛西善蔵氏の——。 斯う誌しただけで私は、この十幾日を呆然と打ち過した。合憎、また雨ばかりが好く降り続いたものだ。 葛西善蔵氏の——何から書いたら私はこの一文を適度に纏め得るか——私は迷つてしまつたのである。誌すならば、今日は、何か総体的に形式を重んじた古流の一文を念としたのであるが、それには私の筆は余りに不自由である。 論や批評は、殊に今日は苦しい。 何か

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十五巻第九号(九月号)」新潮社、1928(昭和3)年9月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日