どうしたらわたしはあわれなかのじょをおどさずにすませるだらう
どうしたら私は憐れな彼女を悸さずに済せるだらう

冒頭文

或望遠鏡製作所に居る友達を私は頻りに訪れてゐる、私は或望遠鏡を彼に依頼したのである、その眼鏡の構造を此処に述べるのは大変だから省かう。 どうせ忙しい友達が仕事の合間を見計つて徐々と組み立てるのだから何時仕上るか解らない、彼と私と共同で設計した少々型ちの変つた眼鏡でウマク行けば今の私にとつては得難い侶伴になる筈だ。——私達は静かに亢奮してギンザ裏のバーを次々に工房に変へて行つた。彼のポケツ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「手帖 第一巻第六号(八月号)」文藝春秋社、1927(昭和2)年8月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日