しゅみにかんして
趣味に関して

冒頭文

眼鏡 或日、趣味に関して人に問はれた。 稍暫く私は、堅く首を傾けて忠実に沈思した——結局、酒なのか? と訊ねられた。それも私は、烏耶無耶に、否定するほどの気力もなく、何となくかぶりを振るだけのことだつた。私は困つて、私のこの殺風景な居室を見ながら、どうして貴君(あなた)はそのやうな質問を、然も熱心に訊ねる気になつたのですか? と云はずには居られなかつた。客は、それが今日の自分の仕事

文字遣い

新字旧仮名

初出

「太陽 第三十三巻第三号(三月号)」博文館、1927(昭和2)年3月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日