エス・アイせいへ
S・I生へ

冒頭文

本誌の二月号に、君が書いた、僕に関するスケツチ文は、稀に見る非常識な、失敬な文章である。 僕は、在学中適齢に達したが、猶予願ひすらせずに堂々と検査をうけたものだ。君は、どんなつもりで書いたのかも知れないが、縦令一言半句でも、僕の国民としての名誉を傷けるやうな文句を、疎かに使はれては迷惑千万だ。僕は、忠良なる日本国民である。僕は、君の云はれるやうな「ヱビス」のやうな強さはもたないが、不幸に

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章倶楽部 第十巻第三号(三月号)」新潮社、1925(大正14)年3月1日

底本

  • 牧野信一全集第二巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年3月24日