かいひんにっし ろくがつそうさくひょう
海浜日誌 六月創作評

冒頭文

一 ——日。六月の雑誌二冊ふところにして、朝、砂浜に坐る。時々こんな風にして浜に降りるが今朝はいつもとは違つた心だつた。「月評」をする筈なのだ。これは初めての仕事だ。——だから、である。手紙で友人の創作についての批評や感想は往々書くが、それとこれとは比較にならない。相手の性格も日常生活もよく知つてゐるし、当人の創作は残らず読んでゐるといふ親しい四五人の友達だけに止つてゐた。それだけにそれ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報(夕刊) 第一三九六七号、第一三九七二号、第一三九七四号、第一三九七七号、第一三九七九号、第一三九八一号、第一三九八四号」時事新報社、1922(大正11)年6月3日、8日、10日、13日、15日、17日、20日

底本

  • 牧野信一全集第一巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年8月20日