つがるちほうとチエホフ
津軽地方とチエホフ

冒頭文

こなひだ三幕の戲曲を書き上げて、それからもつと戲曲を書いてみたくなり、長兄の本棚からさまざまの戲曲集を持ち出して讀んでみたが、日本の大正時代の戲曲のばからしさには呆れた。よくもまあ、こんなものを、書く人も退屈せずに書いたもの哉、讀む人も退屈せずに讀んだもの哉、さうしてこんなものでもたいてい大劇場に於て當時の名優に依つて演ぜられたものらしいが、よくもまあ、名優たちもこんなつまらない臺詞を大眞面目で暗

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「アサヒグラフ 第四十五巻第十四号」1946(昭和21)年5月15日

底本

  • 太宰治全集11
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月25日