ぎむ
義務

冒頭文

義務の遂行とは、並たいていの事では無い。けれども、やらなければならぬ。なぜ生きてゐるか。なぜ文章を書くか。いまの私にとつて、それは義務の遂行の爲であります、と答へるより他は無い。金の爲に書いてゐるのでは無いやうだ。快樂の爲に生きてゐるのでも無いやうだ。先日も、野道をひとりで歩きながら、ふと考へた。「愛といふのも、結局は義務の遂行のことでは無いのか。」 はつきり言ふと、私は、いま五枚の隨筆

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文學者 第二巻第四号」1940(昭和15)年4月1日

底本

  • 太宰治全集11
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月25日