ちゃづけさんりゃく
茶漬三略

冒頭文

柾木孫平治(まさきまごへいじ)覚(おぼ)え書(がき) 人々は時の天下様である太閤(たいこう)の氏素姓(うじすじょう)を知りたがった。羽柴(はしば)筑前守秀吉あたりから後のことは、誰でも知っていたが、その以前の彼を知りたがった。 わけて、小猿とか、日吉(ひよし)とか呼ばれて、姓さえろくになかった時代の生い立ちを知りたがった。 けれど太閤は、自分の素姓については、生涯、人に語

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日 創刊一千号記念特別号」1939(昭和14)年

底本

  • 柳生月影抄 名作短編集(二)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年9月11日