やぎゅうつきかげしょう |
柳生月影抄 |
冒頭文
弟の窓・兄の窓 一 紺屋の干(ほ)し場(ば)には、もう朝の薄陽が映(さ)している。 干瓢(かんぴょう)のように懸け並べた無数の白い布(ぬの)、花色の布、紅(あか)い模様のある布などが、裏町の裏から秋の空に、高々と揺れていた。 「そんな身装(みなり)で、近所の人目につく。——お駒、もういい、家に這入(はい)っておれというに」 又十郎宗冬(むねふゆ)は、叱るよ
文字遣い
新字新仮名
初出
「週刊朝日 新春特別号」1939(昭和14)年
底本
- 柳生月影抄 名作短編集(二)
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1990(平成2)年9月11日