はたおかじゅんさ
旗岡巡査

冒頭文

雲雀(ひばり)も啼(な)かぬ日(ひ) 一 河が吼(ほ)えるように河の底から、船頭の大きな声が、 「——船止(ふなど)めだとようっ」 「六刻(むつ)かぎりで、川筋も陸(おか)も往来止めだぞうっ」 船から船へ、呶鳴り交(か)わしてから触れ合っていた。 下総(しもうさ)の松戸の宿場。 雪はやっと、降りやんではいたが—— きのうからの大雪は、この

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日 初夏特別号」1937(昭和12)年

底本

  • 柳生月影抄 名作短編集(二)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年9月11日