くもきりえんまちょう
雲霧閻魔帳

冒頭文

人生(じんせい)・間(あい)の山(やま) なるべく、縁起の吉(い)い日(ひ)にしようぜ。御幣(ごへい)をかつぐ訳じゃないが、物は縁起ということもあるし、お互い様に明日(あす)の首の座は分らない。こちとら、白浪渡世—— いうにゃ及ぶ。 さて、その日は? そうよ。——初日の出の元日——あたりはどうだ。 なるほど、そいつアいい。 元日より縁起の吉い

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日 新春特別号」1933(昭和8)年

底本

  • 治郎吉格子 名作短編集(一)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年9月11日