しょうゆぼとけ
醤油仏

冒頭文

一 五月雨(さみだれ)は人を殺す? …… 人入れ渡世の銅鑼屋(どらや)の亀さんの部屋にいる、日傭取(ひようとり)の人足達も、七人が七人とも雨で、十日も仕事にあぶれて、みんな婆羅門(ばらもん)の行者みたいに目を凹(へこ)ましていた。 左次郎は隅っこに寝ていた。 うすい蒲団へ柏餅(かしわもち)にくるまって、気の小さい目をしながら、みんなの馬鹿話を聞いていると、何時までも

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1928(昭和3)年5月号

底本

  • 治郎吉格子 名作短編集(一)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年9月11日