しほんたいへいき 12 みなとがわじょう |
| 私本太平記 12 湊川帖 |
冒頭文
面(めん) まだ葉ざくらは初々(ういうい)しい。竹窓の内までが、あら壁もむしろも人も、その静かな、さみどりに染まっている。 「…………」 正成はさっきから赤鶴(しゃくづる)の仕事にしげしげと見とれていた。天野沢(あまのさわ)の金剛寺前に住んでいる仮面打(めんう)ちの老人で——越前の遠くから移住してきた者だと、この道にくわしい卯木(うつぎ)夫婦から聞いている。はじめにここへ彼を案内したのも、卯木の
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 私本太平記(七)
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1990(平成2)年4月11日