しほんたいへいき 06 はっこうじょう |
| 私本太平記 06 八荒帖 |
冒頭文
柳営日譜(りゅうえいにっぷ) 十月。晩秋の好晴。 北条高時は江ノ島の弁財天(べんざいてん)へ参籠(さんろう)して、船で浜御所へもどる海上の途にあった。 「なに。わしを清盛(きよもり)のようだとか?」 あの特有なかなつぼ眼(まなこ)で、高時は船中の船酒盛(ふなさかも)りの近習らを、ねめ廻し、 「ばかを申せ。すれや元々、北条家は“平家”であるには、ちがいないが」 と、ぺろと上唇を舐(な)めた。
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 私本太平記(四)
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1990(平成2)年3月11日第1刷