しほんたいへいき 02 ばさらじょう |
| 私本太平記 02 婆娑羅帖 |
冒頭文
乱鳥図(らんちょうず) 都は紅葉しかけている。 高尾も、鞍馬も。 その日、二条加茂川べりの水鳥亭(すいちょうてい)は、月例の“文談会(ぶんだんかい)”の日であった。 流れにのぞむ広間の水欄(すいらん)には、ちらほら、参会者の顔も見えはじめ、思い思いな水鳥の群れに似た幾組かを、ここかしこに作りあっていた。 「いいなあ、秋の水音は」「肌ごこち、なんともいえぬ。河原は昼の虫の音だし……」
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 私本太平記(一)
- 吉川英治歴史時代文庫、講談社
- 1990(平成2)年2月11日