しほんたいへいき 01 あしかがじょう
私本太平記 01 あしかが帖

冒頭文

下天地蔵(げてんじぞう) まだ除夜の鐘には、すこし間がある。 とまれ、ことしも大晦日(おおつごもり)まで無事に暮れた。だが、あしたからの来る年は。 洛中の耳も、大極殿(だいごくでん)のたたずまいも、やがての鐘を、偉大な予言者の声にでも触(ふ)れるように、霜白々と、待ち冴えている。 洛内四十八ヵ所の篝屋(かがりや)の火も、つねより明々と辻を照らし、淡い夜靄(よもや

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 私本太平記(一)
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1990(平成2)年2月11日