なるとひちょう 01 かみがたのまき
鳴門秘帖 01 上方の巻

冒頭文

夜魔(よま)昼魔(ひるま) 安治川尻(あじがわじり)に浪が立つのか、寝しずまった町の上を、しきりに夜鳥(よどり)が越えて行く。 びッくりさせる、不粋(ぶすい)なやつ、ギャーッという五位(い)鷺(さぎ)の声も時々、——妙に陰気(いんき)で、うすら寒い空梅雨(からつゆ)の晩なのである。 起きているのはここ一軒。青いものがこんもりした町角(まちかど)で、横一窓の油障子(あぶらし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 鳴門秘帖(一)
  • 吉川英治歴史時代文庫2、講談社
  • 1989(平成元)年9月11日