みやもとむさし 06 そらのまき |
| 宮本武蔵 06 空の巻 |
冒頭文
普賢(ふげん) 一 木曾路へはいると、随所にまだ雪が見られる。 峠の凹(くぼ)みから、薙刀(なぎなた)なりに走っている白い閃(ひらめ)きは、駒ヶ岳の雪のヒダであり、仄紅(ほのあか)い木々の芽を透(す)かして彼方に見える白い斑(まだら)のものは、御岳(おんたけ)の肌だった。 だがもう畑や往来には、浅い緑がこぼれている。季節は今、なんでも育つ盛(さか)りなのだ。踏んづけても踏んづけても、若い
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 宮本武蔵(五)
- 吉川英治歴史時代文庫18、講談社
- 1989(平成元)年12月11日