みやもとむさし 05 かぜのまき
宮本武蔵 05 風の巻

冒頭文

枯野見(かれのみ) 一 丹波街道の長坂口(ながさかぐち)は、指さして彼方(かなた)に望むことができる。並木越しに、白い電光(いなずま)かのように眼を射るのは、その丹波境の標高で、また、京都の西北の郊外を囲っている山々の襞(ひだ)をなしている残雪だった。 「火を放(つ)けろ」 と誰かいう。 春先なのだ。まだ正月の九日という日である。衣笠(きぬがさ)のふき颪(おろ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 宮本武蔵(五)
  • 吉川英治歴史時代文庫18、講談社
  • 1989(平成元)年12月11日