さしあげたうで
さしあげた腕

冒頭文

見渡すかぎり、一面に頭(あたま)の海である。高くさし上げた腕の森が、波に半身を露はす浮標(うき)のやうに突出てゐる。跪いて祈る一大民衆だ。 さし上げた腕の間から皆めいめいに上向(うはむき)の頭がみえる。海藻(かいさう)や地衣(こけ)がこの浮標(うき)に垂下(たれさ)がつてゐる。東から吹く風に、この髮の毛がふくらんで、おのづと拍子をとつて波動してゐる。それが、また、ひとつの祈にみえる。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 上田敏詩集
  • 玄文社詩歌部
  • 1923(大正12)年1月10日