こだいのしょうじょ |
古代之少女 |
冒頭文
一 かこひ内の、砂地の桑畑は、其畝々に溜つてる桑の落葉が未だ落ちた許りに黄に潤うて居るのである。俄に寒さを増した初冬の趣は、一層物思ひある人の眼をひく。 南から東へ「カネ」の手に結ひ廻した垣根は、一風變つた南天の生垣だ。赤い實の房が十房も二十房も、いづれも同じ樣に垂れかゝつて居る。霜が來てから新たに色を加へた、鮮かな色は、傾きかけた日の光を受けて、赤い色が愈赤い。 門
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「臺灣愛國婦人 第二十三~二十九卷」1910(明治43)年10月15日~1911(明治44)年4月1日
底本
- 左千夫全集 第三卷
- 岩波書店
- 1977(昭和52)年2月10日