つゆのあとさき |
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冒頭文
一 女給(じょきゅう)の君江(きみえ)は午後三時からその日は銀座通のカッフェーへ出ればよいので、市(いち)ヶ谷(や)本村町(ほんむらちょう)の貸間からぶらぶら堀端(ほりばた)を歩み見附外(みつけそと)から乗った乗合自動車を日比谷(ひびや)で下りた。そして鉄道線路のガードを前にして、場末の町へでも行ったような飲食店の旗ばかりが目につく横町(よこちょう)へ曲り、貸事務所の硝子窓(ガラスまど)
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- つゆのあとさき
- 岩波文庫、岩波書店
- 1987(昭和62)年3月16日改版第1刷