こぶしのはな
辛夷の花

冒頭文

「春の奈良へいつて、馬酔木(あしび)の花ざかりを見ようとおもつて、途中、木曾路をまはつてきたら、おもひがけず吹雪に遭ひました。……」 僕は木曾の宿屋で貰つた絵はがきにそんなことを書きながら、汽車の窓から猛烈に雪のふつてゐる木曾の谷々へたえず目をやつてゐた。 春のなかばだといふのに、これはまたひどい荒れやうだ。その寒いつたらない。おまけに、車内には僕たちの外には、一しよに木曾からのり

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆3 三月の花
  • 作品社
  • 1999(平成11)年2月10日