なのはなづきよ
菜の花月夜

冒頭文

一 巨大な高原だ。どこまでも拡がる裾は菜の花で、盛り上つて、三里北の野末に、日本海が霞んで見える。淡彩の青の中に、ポッチリ泛んだのが隠岐の島だ。 菜の花月夜の季節が来た。 「菜の花月夜ぢやけん、今に誰かが狐に騙されるぢやろ」 「助平が一番騙され易いさうぢや」 「一ぺん、別嬪の狐に出会うて見たいわい」 村の若い衆は農閑期の気安さに夜が更けるまで、さまよひ歩いた。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆3 三月の花
  • 作品社
  • 1999(平成11)年2月10日