はるのあんじ |
| 春の暗示 |
冒頭文
25. Ⅲ. 10.午後三時過ぎ、 薄黄水仙の浅葱(あさぎ)の新芽枯れたる芝生のなかに仕切られたる円形或は長方形の花壇のなかに二寸ばかり萌えいづ。その幾何学的なる配列のつつましさよ、風微(かす)かにかよふ。 水噴かぬ錆びたる噴水の露盤より静かに滴る水滴。 温室前の厚葉シユロランの高きそよぎ。キミガヨランの長きしだり葉に日は光り、南洋土人の頭飾の如くにうち動(ゆら)ぐ。 植物園事務室より
文字遣い
新字旧仮名
初出
「創作 一巻三号」1910(明治43)年5月
底本
- 花の名随筆3 三月の花
- 作品社
- 1999(平成11)年2月10日