ふじやホテル
富士屋ホテル

冒頭文

箱根宮の下の富士屋ホテルは、われら食子にとって、忘れられない美味の国だった。 戦前戦中、僕は、富士屋ホテルで、幾度か夏を過し、冬を送ったものだった。それが、終戦後、接収されて、日本人は入れなくなってしまった。そして又、それが一昨年の夏だったか、解除になって、再び日本人も歓迎ということになり、ホテルから通知が来た。 行きたいとは思いながら、暇もなかったし、又一つには(と言って、実

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ロッパの悲食記
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年8月24日