おやかたコブセ |
| 親方コブセ |
冒頭文
X市在住土工達の親方コブセの噂はかねがね耳にはさんでいたが、私がじかに彼と会ったのは、金鵄(きんし)がまだ九銭から十銭になる直前だから、ついこの間のことである。それは同市の会社に勤めているO君から、「来る日曜はこの港市八千余の虫やイスラム教徒達の運動会である。万障繰合せ一度御来参の程を……」云々と誘って来たので、「ではこの虫も是非参加させて頂き度く」云々と返事を出して、勇躍出向いて行った時のことだ
文字遣い
新字新仮名
初出
「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日
底本
- 光の中に 金史良作品集
- 講談社文芸文庫、講談社
- 1999(平成11)年4月10日