あるかんぬしのはなし
ある神主の話

冒頭文

漁師の勘作(かんさく)はその日もすこしも漁がないので、好きな酒も飲まずに麦粥(むぎかゆ)を啜(すす)って夕飯(ゆうめし)をすますと、地炉(いろり)の前にぽつねんと坐って煙草を喫(の)んでいた。 「あんなにおった鯉(こい)が何故(なぜ)獲(と)れないかなあ、あの山の陰には一疋(ぴき)や二疋いないことはなかったが、一体どうしたんだろう」 その夜は生暖な晩であった。地炉に焚(た)く榾(ほだ)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日