つなみのあと
海嘯のあと

冒頭文

壮(わか)い漁師は隣村へ用たしに往って、夜おそくなって帰っていた。そこは釜石(かまいし)に近い某(なにがし)と云う港町であったが、数日前に襲って来た海嘯(つなみ)のために、この港町も一嘗(ひとなめ)にせられているので、見るかぎり荒涼としている中に、点々として黒い物のあるのは急ごしらえの豚(ぶた)小屋のような小家であった。それは月の明るい晩であった。壮い漁師はその海嘯のために娶(もら)ったばかりの女

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日