ニコリフスクに恐ろしい殺戮(さつりく)の起った時分のことであった。そのニコリフスクから五六里離れた村に過激派のクラネクと云う警察署長がいた。 彼はある日事務室にいて己(じぶん)が某命(あるめい)をふくめて外へやった部下の帰って来るのを待っていた。それは浦塩(うらじお)から来て雑貨商を営んでいるローゼンと云う男の女(むすめ)のことを探(さぐ)らしにやったところであった。暖かな春の陽(ひ)が硝子戸