しゅんしん
春心

冒頭文

Ⅰ 広巳は品川の方からふらふらと歩いて来た。東海道になったその街には晩春(はるさき)の微陽(うすび)が射(さ)していた。それは午(ひる)近い比(ころ)であった。右側の民家の背景になった丘の上から、左側の品川の海へかけて煙のような靄(もや)が和(なご)んでいて、生暖かな物悩ましい日であった。左側の川崎屋の入口には、厨夫(いたば)らしい壮(わか)い男と酌婦らしい島田の女が立って笑いあっていた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第一巻 女怪の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年7月10日