館林(たてばやし)の城下では女賊(じょぞく)の噂で持ち切っていた。それはどこからともなしに城下へ来た妖婦であった。色深い美しい顔をした女で、捕えようとすると傍にある壁のはめ板へぴったり引附(ひっつ)いてそのまま姿を消すのであった。土地の人は何人(たれ)云うとなしにそれを板女(いたおんな)と云っていた。 「昨夜(ゆうべ)裏の方で犬が啼(な)くから、出て往って見ると、ちらと人影が見えたが、板女かも判