ひとにぎりのかみのけ
一握の髪の毛

冒頭文

章一は目黒駅へ往く時間が迫って来たので急いで著更(きが)えをしていた。婦人雑誌の訪問記者をしている章一は、丸ビルの四階にある編輯室(へんしゅうしつ)へ毎日一回は必らず顔を出すことになっていて、それを実行しないと編輯長の機嫌の悪いことを知っていながら三日も往っていなかった。章一の幸福に満ちたたとえば風船玉のふわりふわりと飛んでいるような頭の一方の隅(すみ)には、編輯長の怒りに対する恐れが黒い影となっ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日