ひこうきにのるあやしいしんし
飛行機に乗る怪しい紳士

冒頭文

A操縦士とT機関士はその日も旅客機を操(あやつ)って朝鮮海峡の空を飛んでいた。その日は切れぎれの雲が低く飛んで、二〇メートルと云う烈(はげ)しい北東の風が、水上機の両翼をもぎとるように吹いていた。下には荒れ狂う白浪(しらなみ)が野獣が牙をむいたようになっていた。 機体は木の葉のように揺れた。それは慣れているコースではあるが、二人にとってこれほど苦しい飛行はかつてなかった。A操縦士はハンド

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日