ゆきのよるのかい
雪の夜の怪

冒頭文

昼間のうちは石ばりをしたようであった寒さが、夕方からみょうにゆるんでいる日であった。私はこの比(ごろ)よく出かけて往く坂の上のカフェーで酒を飲みながら、とりとめのないことをうっとりと考えていた。 「や、雪だ」 「ほんとだわ」と云ういせいの良い壮(わか)い男の声と、あまったれたような女の声が絡みあうなり、入口のガラス戸が敷居の上に重い軋(きし)りをさした。 「雪だわよ」 今のあまった

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第一巻 女怪の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年7月10日