すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女

冒頭文

外から帰って来た平兵衛(へいべえ)は、台所の方で何かやっていた妻を傍へ呼んだ。女は水で濡(ぬ)れた手を前掛(まえかけ)で拭き拭きあがって来た。 「すこし、お前に、話したいことがある」 女は何事であろうと思って、夫の顔色を伺(うかが)いながらその前へ坐った。 「この加賀へやって来たものの、どうも思わしい仕官の口がないから、私(わし)は土州(としゅう)の方へ往こうと思う、土州には、深

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日