あまよぞうし
雨夜草紙

冒頭文

Ⅰ 小さくなった雨が庭の無花果(いちじく)の葉にぼそぼそと云う音をさしていた。静かな光のじっと沈んだ絵のような電燈の下で、油井(あぶらい)伯爵の遺稿を整理していた山田三造(さんぞう)は、机の上に積み重ねた新聞雑誌の切抜(きりぬき)や、原稿紙などに書いたものを、あれ、これ、と眼をとおして、それに朱筆(しゅふで)を入れていた。当代の名士で恩師であった油井伯爵が死亡すると、政友や同門からの推薦

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第二巻 幽霊の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年8月2日