うきぐも
浮雲

冒頭文

理性が万物の根拠でありそして万物が・理性あるならば若し理性を棄て理性を憎むことが不幸の最大なものであるならば……。 ——シェストフ—— 一 なるべく、夜更(よふ)けに着く汽車を選びたいと、三日間の収容所を出ると、わざと、敦賀(つるが)の町で、一日ぶらぶらしてゐた。六十人余りの女達とは収容所で別れて、税関の倉庫に近い、荒物屋兼お休み処(どころ)といつた、家をみつけて、そこで独りになつて、ゆき子は

文字遣い

新字旧仮名

初出

「風雪」1949(昭和24)年11月~1950(昭和25)年8月<br>「文学界」1950(昭和25)年9月~1951(昭和26)年4月

底本

  • 筑摩現代文学大系 39 佐多稲子 林芙美子 集
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年1月15日